御曹司さまの言いなりなんてっ!

「都会の娘っこは、ひ弱だなあ。これ食って早く元気になれ」

「あ、ありがとうございます」

「無理するなよ? じゃ、またな」


 それだけ言って相馬さんは、ノソノソと玄関から出て行ってしまう。

 慌てて見送りに出ようとする私達を「いい、いい」と手で制して、そのままトラックに乗って立ち去ってしまった。

 遠ざかる車を見送ってから、私と部長はレジ袋を覗き込む。

 中には綺麗に赤く色づいた林檎が、ギュウギュウになるほどいっぱいに詰まっていた。


「すごい。こんなにたくさん」

「気をつかっていただいて申し訳ないな。明日、改めて相馬さんにお礼に行こう」

「はい」


 そう言って玄関の中に戻ろうとした私達の背中に、今度は元気な女性達の声が聞こえた。


「一之瀬さん! 一之瀬さんってばー!」


 呼ばれて振り向いた私と部長が、目を丸くした。

 割烹着に長靴姿のおばあちゃん達が、集団でゾロゾロとこっちへ向かってやって来るのが見える。

 なに? なんなのあの割烹着軍団は?


「ぶ、部長。あの方達は?」

「地元の婦人会の皆さんだ。会長の小林さんと、副会長の伊藤さんと……」

「他、会員一同の御一行さまですか?」

「ああ」


 その婦人会の皆さまが、いったい何のご用で?

 ワイワイガヤガヤ近づいて来たご一行様先頭の、会長の小林さんらしき人が、愛想よく部長に話しかける。
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