御曹司さまの言いなりなんてっ!

 本当の物語はハッピーエンドのままで凍結しない。

 現実を知っている大人は、その先を生きていかなければならない。

 だから大きな不安を覚えているのは、私だけじゃなく部長も同じはず。

 それでも私の心は、私を抱きしめた彼の腕と胸を思い、掻き毟られるように切なくなる。

 彼を受けいれたこの唇と舌は、無上の喜びを感じている。


 もう始まってしまったんだもの。転がる石は止められないし引き返せない。

 私達は、行き着く先へ向かって絡み合いながら進むしかないんだわ。


 持て余すような溜め息をつき、少しでも心を落ち着かせようと両目を閉じた。

 目の前は闇に閉ざされても、頭に浮かぶのは、私を求めてくれた部長のことばかり。

 そして私の胸は、例えようもない大きな幸福感に包まれていた。



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