御曹司さまの言いなりなんてっ!


 とにかく本当に、どうしようもなく今日は暑い。

 モンモンする真夏の熱気の中で、汗まみれのあたしは堪らず大きな息を吐いた。


 高校が夏休みに入ってからの気温は、これが株価だったらどんなに親が喜ぶだろうってくらい、右肩上がりの線を描いている。

 昨日のニュースで騒がれていた最高気温を、今日は午前中から軽々と超えてしまったし。

 あぁ、ジャージの濃紺色が、周囲の熱気を吸収して余計に暑い……。


 部活帰りの通学路で信号待ちをしながら、額に浮かんだ汗をタオルで何度拭いても、拭いたそばからまた浮かんでくる。

 今は午後の2時過ぎ。日中で一番陽射しがキツくなる時間帯だ。

 降る音が聞こえそうなほど強烈な日光が、あたしの頭のてっぺんをジリジリと痛めつける。


 これ、髪の分け目とかつむじ部分とか、絶対日焼けしてるだろうな。

 テニス部なんかじゃなくて、屋内の部活にすれば良かったな。

 炎天下の校庭に比べれば涼しいし、ラクできると思う。

 でもそれを言うと必ず、剣道部の友だちが怒るんだよなぁ。

 『面を外すと、汗が塩の固まりになってるんだからね! 自分の体で調味料を生産しちゃった衝撃が想像できる!?』って。

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