御曹司さまの言いなりなんてっ!
『早く帰って来て、お仏壇に線香をあげて手を合わせて、おばあちゃんを安心させなさい』
「もちろんよ。その時は、晴れて再就職の吉報を仏前に報告するから」
『これ、成実!』
「じゃ、またね」
さっさと話を切り上げた私はスマホの電源を切ってしまった。
このまま実家に戻るなんて冗談じゃない。
おばあちゃんは、いつも無条件に私の応援をしてくれていた。
だからこそ、スゴスゴと都落ちした惨めな私の姿なんて見せたくない。
待ってて、おばあちゃん。きっと私、良い結果を持ってお線香をあげに行くからね!
決意も新たに、私は目についた会社へ片っ端から資料請求のメールを送り付ける。
もう無差別攻撃並みにあちこちに請求しまくり、そして入社試験のノウハウ本と履歴書をどっさり買い込んだ頃……。
部長から唐突に、『うちの会社と取引があった大手総合商社の、入社試験を受けてみないか?』という連絡がきた。
なんでもその商社のお偉いさんが、路頭に迷った私たちを不憫に思ってくれたらしく。
『先代の頃から長年のお付き合いもあったことだし、さすがに全員雇用とはいかないが、数人なら面倒を見よう』
と救いの手を差し伸べてくれたらしかった。
「う、受けます受けます! ぜひ受けさせて下さい!」
さすが大手は懐のデカさが違う。
断る理由も余裕も無い私は、大喜びで部長に即答した。