御曹司さまの言いなりなんてっ!
「なんなんだ、これは! 彼らは誰だ!?」
「小林さんの息子さんです」
「……小林さん? 婦人会のリーダーの?」
「はい。息子さん、町でイベントレンタル会社を経営してるんですって。お蔭で色々と無理なお願いもきいてもらえて、本当に助かりました」
小林さんの息子さん達は、手慣れた様子で照明器具やら発電機やら、長テーブルやらを設置し始めた。
そして頼もしい笑顔で話しかけてくる。
「設営は自分達にドンと任せて下さい。いつもやってますんで」
「すみません。こういうの全然わからないんで、助かります。ありがとうございます」
「こちらこそ母がいつもお世話になってます。ありがとうございます」
部長はお互いにペコペコと頭を下げ合う私達をポカンと見ている。
そして額に手を当てながら、溜め息と一緒に声を絞り出した。
「成実、俺に状況を説明してくれ。頼むから」
「相馬さんと小林さんから聞きました。ここのお祭りって屋台も何も無いんですって?」
日本各地の夏祭りには色んな意味合いがあるらしいけど、どこの祭りも神様やご先祖様へ捧げる鎮魂の意味合いが大きい。
ここの祭りは、まさにそれ一本。
毎年小さな御神輿をかついだ男衆が村人を従え、笛や太鼓の音色と共に時間をかけてゆっくりと村内を練り歩く。
……だけ。
厳粛といえば、とても厳粛なんだけど。
若い人や子どもにとっては正直、つまらない。大きな町の華やかな祭りを体験すれば、地味な祭りに興味を持てなくなるのも仕方ない。
ただでさえ村の人口が減っているのに、これじゃここの祭りがどんどん廃れていく。