御曹司さまの言いなりなんてっ!
彼から林檎を受け取り、私も思い切り齧りつく。
甘んじて受けよう。私も選ぼう。
あなたと共に生きられない楽園なんか、私にとって何の意味も無い。
窓の外では花火が上がり、暗い空を彩り続けている。
その下で私達は抱きしめ合い、ベッドに倒れ込んだ。
もう迷いも、ためらいも無い。
無心に唇を重ね、禁断の果実という名のお互いを貪るように味わう。
私を大切に扱おうとしてくれている彼からのキスは、あの、初めてのキスと同じ林檎の味がした。
とろけるような甘みと、えも言われぬ刺激が脳を突き抜ける。
素肌と素肌が触れ合った部分から、陶酔するほどの幸福感が生まれる。
彼によって体の芯から次々と掘り起こされる、痺れるようなもどかしい疼き。
私は真っ白なシーツの上に組み敷かれながら身をよじり、甘く呻いて喜びに浸った。
彼の優しい目に、徐々に熱い色が混じり始める。
堪らず漏れ出す私の声が、彼の心と体を昂ぶらせていくのを知っていながら止められない。
艶めかしい感覚を彼の指先が、舌が的確に捕えて、獲物を撃つように攻め立てていく。
あぁ、彼の指も、手の平も、唇も、肌に擦れる髪の毛すらも。
その全部が、私の……余すところない全てを……。
そしてついに私は、楽園と引き換えに愛しい人を受けいれた。
聞こえるのは、自分の声。彼の荒い呼吸。ベッドの軋む音と、花火が咲く音。
仰け反るノドは甘く噛まれ、容赦を求める手は絡め取られて行き場を失う。
激しく上下する胸には、何度も何度も唇が降る。
鳴く声は荒々しく覆い被さる彼の唇によって、息ひとつ逃さないほど全て奪われてしまう。
その動きが、声が、熱が、止めどなく彼の猛りを加速させていく。
どんな言葉で許しを請うても、汗で湿った彼の背中を叩いても、聞き入れられない。
激しい動きに揺らされる自分の足の爪で彼の皮膚を傷つけ、せめて、意趣返しをした。