御曹司さまの言いなりなんてっ!
言いたいことを代わりに全部言ってもらった私は、首をガクガク全力で縦に振った。
部長は全員のそんな困惑ぶりも意に介さない様子で、短く言い切る。
「私の一存での決定事項だ。では遠山、行くぞ」
「どこへ!?」
「パーティーだ」
「……パ……!?」
「我が社の会長、つまり私の祖父の誕生パーティーがこれからホテルで開かれる。お前には私の同伴者として出席してもらう」
「はあ!? 同伴者!?」
「そうだ。つまりお前は、私のパートナーだ」
もはや、開いた口が塞がらない。
もう私には目の前のこのイケメンが、まるで異星人に思える。
セレブと一般庶民の常識の壁って、こんなに高くて分厚いものなの?
「ということで中座してすまないが、皆、後はよろしく頼む。さあ遠山」
「は…………」
「急げ。パーティーまでに済ませるぞ」
「………なにを?」
「買い物だ。私がお前に、ドレスと靴とアクセサリーを買ってやる。どうせ持っていないんだろう?」
そう言って部長は、急ぎ足で部屋を出て行った。
行くぞと言われても、とてもじゃないけど「はあい」と気楽について行く気になるわけがない。
その場に縫い付けられたように立ちすくんでいた私は、すぐに自分の全身に突き刺さる視線に気がついた。
みんなが私を、とても言葉で言い表せないような、すごい目付きで眺めている。
私は誰とも無しにブンブン頭を下げながら、逃げるように部屋を飛び出した。