御曹司さまの言いなりなんてっ!

 そして前方に見える部長の背中を、ほぼ全力疾走のスピードで追いかける。

 混乱の極致の私は取り繕う余裕もなく、地声丸出しで叫んだ。


「ちょっと待ってくださいよ部長!」

「なんだ? どうした?」

「なんで……なんで私があなたに、ドレスと靴とアクセサリーを買ってもらうことになるんですか!?」

「お前に自前のドレスがあるのか?」

「ないですよ!」

「じゃあ、無いものは買うしかないだろう」

「そういうことじゃなくて!」


 息を切らしながら私は、自分の髪の毛を掻き毟りたい心境だった。

 ああ、この人と私って、とことん相性が悪い気がする!

 まっったく意思の疎通ができていない!


「なぜ私がそんなセレブなパーティーに、しかも部長のパートナーとして、出席するのかって聞いてるんですが!」

「お前が俺のプロジェクトのサポート役だからだ」

「だから! そもそも私がサポート役ってところからして、おかしくないですか!?」

「俺の役に立たなければ採用は取り消しと言ったはずだ。もう忘れたのか?」

「覚えてます!」

「お前が役に立つかどうかを見定めるためには、一緒に仕事をするしかないだろう」

「な……?」

「お前は公正に扱われるのが好きなようだからな。公正な状況を作ったまでだ。理に叶っているだろう?」

「………」
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