御曹司さまの言いなりなんてっ!
こっちの意見は無視なの?
もちろん買っていただく立場で言えることじゃないのは分かってるけれど、ちょっとくらいはお義理でも、
『どうだ? 気に入ったのはあるか?』
くらいは言ってくれてもいいんじゃない?
これじゃまるで、意思を必要とされていない人形として扱われているみたいな気がする。
やっぱり、しょせん直系ボンボン3代目ね。
いくら豪華なオプション付きの男性でも、ボンボンの実態を知っている私の目は厳しい。
しかも私は、この上司とこれから毎日顔を突き合わせて仕事をすることになるわけで。
これからの日々が思いやられて、重苦しい溜め息をついてしまった。
そんな着せ替えゴッコの果てに、やっと部長が気に入ったのは、ちょっとクラシカルな感じのサックドレスだった。
柔らかな光沢を放つペールグリーンのシルク生地を、同色のシフォンがふわりと覆っている。
袖につけられた小花の飾りが、清楚な可愛らしさを醸し出していた。
「これだ! このドレスが最適だ」
「となると、パンプスはこちらがお勧めです。バッグはこのタイプがよろしいかと。アクセサリーは、シンプルなパールがお似合いと存じます。ストッキングは……」
女性達がまるで精密機械のように、あれよという間にテキパキと小物を揃えていく。