御曹司さまの言いなりなんてっ!
上品なシャンパンベージュのパンプスと、お揃いの色のパーティーバッグ。
ほんのりピンク色が愛らしい、短めのパールネックレス。
ナチュラルベージュの、見えない部分に繊細なレースが施されているストッキング。
その全部に部長のOKが出て、私は「それっ」とばかりに隣の部屋へ連れて行かれた。
「初めまして~。お待ちしてました。ヘアメイク担当のマモルです。よろしくお願いします~」
隣の部屋では、短髪でちょっと面長の中年男性が笑顔でお出迎えしてくれた。
可愛く小首をかしげながら、片手をヒラヒラさせる仕草は紛うことなく、おねえキャラ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「んま、キチンとご挨拶のできるお嬢さんなのね。さあ、時間がないから急ぎましょ!」
背中を押されるようにして洗面台の前に連れて行かれて、自前のメイクを手早く落とされた。
丁寧な洗顔の後に鏡の前に座らされ、メイクが始まる。
「ナチュラルで控え目にってご要望だから、華やかさよりも清楚な可憐さをコンセプトにしていきましょ」
そう言ったマモルさんの男らしく骨ばった手が、意外なほど繊細に私の顔の上を動き回る。
まるで蝶がヒラヒラ舞っているみたいで、思わず指の動きを目で真剣に追ってしまった。