御曹司さまの言いなりなんてっ!
3代目ボンボンじゃ……ない?

 道路が混雑していたこともあって、某有名ホテルに到着するまで多少時間がかかってしまった。

 どうやら誕生パーティー開始の時刻はもう過ぎてしまっているらしく、牧村さんと運転手さんが平謝りしている。


「一之瀬部長、申し訳ございません」

「私の責任です。申し訳ございません」

「いや、元から時間が押しているのは分かっていたんだ。ふたりの責任じゃない」


 私は部長と牧村さんと一緒に急ぎ足で正面ホールを抜け、一階にある会場へ向かった。

 受付を顔パスで済ませて会場の扉を開くと、煌びやかで華やかな祝賀会の様子が目の前に広がっている。

 床や壁に和風で優美な木目調を用いながら、斬新で大胆なデザインの照明を取り入れた、大きな宴会場は圧巻だった。

 立食パーティー形式で、大勢の着飾った招待客が飲み物片手に自由に歩き回っている。

 女性客のドレスや着物の色鮮やかな装いが、まるで花々のようだ。


「一之瀬部長、まずは会長にご挨拶を致しませんと」

「そうだな。どこだろうか」


 正面奥にステージが設置されているけれど、そこには誰もいない。

 会場内ではあちこちに小グループが出来上がっていて、それを構成している人員が、まるで細胞分裂みたいに目まぐるしく入れ替わりをしている。

 全員どっかの有名企業のお偉いさんとか、各界の主要人物とかなんだろう。

 「これはこれは、お久しぶりです」「先日は、どうも」「こちらは●●会社の……」

 幅広い年齢層の男女が、ひたすら紹介と雑談を繰り返しては移動していた。
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