御曹司さまの言いなりなんてっ!
「“私の”プロジェクト? 兄さん、あのプロジェクトを統括しているのは僕なんだけど?」
「あら、プロジェクトの統括? まあ、直一郎さんはもうそんな立派なお仕事を任されているの?」
「えぇお母さん。お祖父様が発案された、大きなプロジェクトなんですよ」
「んまあ、お母さん、嬉しくてお鼻がピノキオさんになってしまうわあ」
あっはっは。おほほほ……と、母と息子が仲良く笑い合っている。
その笑い声の隙を狙って、部長が社長に声をかけた。
「お父さん。お祖父様にご挨拶をしたいのですが、どちらに?」
「今は控え室で休んでいるよ。先に、あちらのお客様方へご挨拶を済ませなさい」
「あ、そうね。直哉さん、お母さんがあなたを皆さんに紹介してあげますからね」
「お願いします、お母さん。牧村、遠山、ここで待っていてくれ」
そう言って部長は両親と弟と一緒に、招待客のグループの方へ歩いて行く。
私と一緒にお辞儀をしながらそれを見送る牧村さんが、こっそり重い息を吐くのを私は聞き逃さなかった。
部長達の姿が人混みに紛れたのを確認して、ガバッと姿勢を戻して牧村さんに掴みかかるように質問する。
「牧村さん! なんなんですかあれは!? いったいどうなってるんですか!?」
「……どう、とは? 具体的にどの部分を知りたいんですか?」
「どうもこうも、全部です!」
あの家族の持つ、特異な空気はなに!?