御曹司さまの言いなりなんてっ!
「あ、あの、部長。それでは私は、外で待たせていただきます」
「だめだ」
「はい。それでは失礼しま…… は?」
颯爽と退去する気満々だった私は、出鼻をくじかれてキョトンとした。
ぽかっと口を開けて部長の顔を見れば、彼は真面目な顔でこんなことを言い出す。
「お前は、ずっと俺のそばにいろ」
「…………え?」
「お前はずっと俺のそばにいろ。と言ったんだ。聞こえなかったのか?」
「…………」
いえ。聞こえました。
聞こえましたけど。
…………。
だから! またそんな、聞きようによっては問題発言なセリフをーー!
声にならない叫びに身悶えする私の背中を押して、部長は有無を言わさず自分の隣に座らせた。
私は満足そうな部長の横で、身が縮むような思いで体を固くするばかりだ。
なんで!? なんで私がここに座らなきゃならないの!?
しかも『ずっと俺のそばにいろ』って、なにそれ!?
なぜ!? なぜもっと普通に『ここで待機していろ』って言えないのよ!?
心の中で散々部長に突っ込みまくっていると、こっちの気も知らない会長が、のんびり話しかけてくる。
「ところで遠山くん、お腹は空いていないかな? 何か持ってこさせよう」
「は!? あ、いえ、結構です」
「そうかね? おお、そうだ。お茶をいれてあげようね」
「いえいえいえ! 私がいれますから!」
天下の一之瀬商事の会長様に、お茶なんていれさせられない!
いそいそと席から立ち上がろうとする会長を必死に止めつつ、私は弾かれるように腰を浮かした。