御曹司さまの言いなりなんてっ!
過去と現在の接点
ランチタイムの社員食堂の大混雑ぶりは、いまだに慣れない。
トレーを持った私は、圧倒的人数に埋め尽くされたフロアの中で、迷子のような心細さを感じていた。
何列も並んだ長テーブルの所々に空きは見られるけれど、そこに割り込む勇気がなかなか持てなくて、溜め息をつく。
「成実? 成実じゃん!」
ウロウロしていたら背中の辺りを突かれる感触がして、私は後ろを振り向いた。
「あ、瑞穂!」
「偶然だねー! 元気だった!?」
同じようにトレーを持った瑞穂が、嬉しそうな笑顔を見せて立っている。
入社試験に見事合格して総務に回った瑞穂とは、あれ以来一度も顔を合わせる機会が無かった。
「おかげさまで、なんとか元気にやってる。良かったら一緒に食べない?」
「うん、もちろん。それにしても、いつも大盛況の社食だね」
瑞穂も私と同じように、この社員食堂の賑わいぶりに圧倒されているようだった。
「こんな光景を見ると、つくづく大きな会社なんだなって実感するね。あたし達が元居たあの会社は、社食すらない中小企業だったし」