ねがい
あれから、どれくらい時間が流れただろう。


夜中に何度も彩乃から電話があって、その度起こされた私は、ついには携帯電話の電源を切って眠った。


そのせいで、見事に睡眠不足。


さらに、電源を切ったためにアラームが鳴らなくて、寝坊をしてしまったのだ。


「もうっ!何なのよ!彩乃のせいで遅刻じゃない!人に迷惑を掛けないでよね!」


慌ててパジャマを脱ぎ捨て、制服に着替えながらチラリと見た時計は、8時を回っている。


こんな時間だと、どんなに急いでも、学校に着けるのは一限目の終わりぐらいか。


よりによって、学年主任の井関先生の授業なんだよね。


凄く怒られるのが確定してるから、休み時間に着くようにしようかな……。


でも、井関先生は遅刻しても、出席扱いにしてくれるんだよね。


……怒られるのが前提だけど。


遅刻を取るか、怒られるのを取るか、悩みながら部屋を出た私は、洗顔を済ませる為に一階に向かった。


それにしても、真夜中に何の用があったんだろう。


こんなにしつこく電話を掛けてくる事は今まで一度もなくて、どちらかと言えばあっさりしてる性格なのに。


昨日、学校に着く前に、言いたい事だけ言って電話を切るという行動が、彩乃の性格を現しているのだ。
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