ねがい
制服を脱ぎ、浴室に入った私は、湯船のふたを取らずにシャワーを浴びた。


ふたを取ってしまって、鏡に映った湯船から、変な物が出て来たらどうしようとか考えてしまうから。


目を閉じている時に何かが起こるのも怖くて、髪を洗おうか悩んでしまう。


先に身体を洗って、変な事が起こらないように確認しながら。


泡を流して、いよいよ洗髪を残すだけ。


今まで何もなかったから、もしかすると私の部屋にしか幽霊はいないのかもしれない。


こんな事なら、最初に髪を洗えば良かったよ。


シャンプーのポンプを押して液体を手に取り、濡れた髪に撫で付ける。


両手で髪を掻き上げて、泡立たせると、それが流れて右目の上に。


目を開けたまま頭を洗うのは苦手だ。


目に何かが入るのが昔から怖くて、目を閉じないと頭を洗えないんだよね。


すぐに右目を閉じて、頑張って左目を開けていたけど……左目にも泡が。


仕方なく、両目を閉じて、早々にシャワーで泡を流し始めると……。









ガタンッ。









湯船の方から、ふたが音を立てた。


えっ……。


な、何?


まさか幽霊!?


嘘、やだ、こんな時に!


まだ泡を落とし切れていないし、目が開けられないのに!
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