ねがい
お母さんに怒られ、パジャマを着てすぐにソファに身を沈め、恐怖に震えながら携帯電話を取り出した私が、メールを送ったのは南部君。


このまま部屋で寝るのも怖いし、リビングでだって幽霊が出ないとも限らない。


いや、浴室に出たくらいだから、リビングにも絶対に出る。


私がいる場所全てが危険地帯。


どこにいたって幽霊が現れるに違いない。


「どうしよう、部屋にもお風呂にも幽霊が現れてるよ!怖いよ!」


助けを求めるように送ったメール。


南部君が幽霊をどうにかしてくれるとは思っていないけど、この恐怖を和らげてほしい。


テレビを見て笑っているお母さんの隣で、ちっとも笑えない私はガタガタと震えているだけ。


早く早くと、南部君からの返信を待っていると……。











ピロ……。













曲が少しだけ鳴って、すぐにメールを開く。




『どうしようったって。森川さん家を出られる?出られるなら迎えに行くけど』




一人でいるよりは南部君に一緒にいてほしい。


だけど、こんな時間から外に出るなんて、お母さんが許してくれるはずがないし。


どちらにしても、南部君に来てもらおうかなと、メール作成画面で指をフラフラと動かしていた。
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