ねがい
学校に行く準備を済ませて、家を出た時には8時半過ぎ。


人間、その気になればこんなに早く準備が出来るんだと感心しながら、朝の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。


いつもより一時間近く遅いからか、少しだけ暖かいような気がして、寒さに震える程じゃない。


「はぁ……井関先生に怒られるの確定だなぁ。嫌だなぁ……」


結局、怒られて出席扱いにしてもらう事を選んだ私の、学校に向かう足取りは重い。


一度、怒られただけで出席扱いになるならと、男子が半分近く遅刻した事があって、その時の井関先生の怒りっぷりは凄まじかった。


遅刻した男子の半分が泣いてしまったくらいだから。


それ以来、わざと遅刻する人はいなくなった。


だから私は今、猛烈に怖い。


初めて井関先生の授業に遅刻するから、大目に見てほしいけど……5分や10分じゃない、盛大な遅刻だからな。


まあ、休み時間は潰れると考えた方が良いよね。


「全部彩乃のせいだ!これで彩乃が遅刻してなかったら、文句言ってやる!!」


良く考えたら……いや、良く考えなくても彩乃からの電話がなければ、私は今頃授業を受けていたわけで。


私が怒られる理由も分からないよ。


彩乃に対する怒りに震えながら、学校に向かった。
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