ねがい
学校に到着して、生徒玄関で靴を履き替えていた私はある事に気付いた。


それは、ある意味当たり前の事と言うか……そうでなければ納得出来ない事だったけれど。


彩乃の靴箱に、まだ上履きが入れられていたのだ。


あんなに遅い時間まで私に電話を掛けていたんだから起きれなくて当然だよ。


それに少しホッとして、靴の爪先をトントンと床に打ち付け、かかと部分に指を入れて上履きを履いた。


そして、教室に向かって歩き始めた時、何か違和感を覚えたのだ。


あれ?この廊下、こんなに暗かったっけ?


うちの学校は、朝から夕方までずっと照明が点いているはずなのに、私の頭上の照明が切れている。


いや、それだけじゃない。


廊下、階段と、私が通る場所の照明が、全て消えていたのだ。


節電でもしているのかなと、二階の廊下を覗いてみると、そこは普通に照明が点いている。


昨日、学校から帰る時は点いていたのに……何かあったのかな?


そう考えながら、私の教室がある三階に辿り着いた時、その疑問はますます強くなった。


廊下に出て、左側に私の教室はある。


右側は照明が点いていたのに、左側の廊下は照明が消えていたから。


それは、突き当たりの音楽室の前まで続いていたのだ。
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