ねがい
今になって思う。


どうしてあの時気付かなかったのか。


どうして笑う幽霊が現れた時に、走ってここまで逃げなかったのか。


それに気付いた時にはもう遅い。


二階で笑う幽霊の声が聞こえる前に、背後から幽霊がいなくなった。


前回は……笑う幽霊の声が聞こえてから、背後の幽霊はいなくなったのに。


つまり、私に憑いている幽霊は笑う幽霊で……二階に現れる為にいなくなったんだ。


どんなに上手くやったとしても、最初から憑いているなら話にならない。


ドアから手を離して、錠に手を伸ばした。


でも……。













その手は、背後から伸びる白い手に掴まれて、動きを止められたのだ。


嘘……何で邪魔をするのよ!


こんなのイカサマじゃない!!


外に出してもらえないなんて!!


「離して!離してよっ!!」


手を振りほどこうとしても、全然動かない。


絶望に包まれ、顔をくしゃくしゃにして懇願したけど、それは幽霊の言葉で打ち砕かれた事を知った。











「あははははっ!!やっぱり騙すのは面白い!!願いが叶うと思った!?思ったんだ!あははははっ!……叶うわけないじゃない」










背後から、あの幽霊の声が聞こえた。
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