ねがい
お昼になり、お母さんがお粥を作って部屋に持って来てくれた。


食欲なんて全くなくて、食べたくなかったけど、お母さんに何かお腹に入れておきなさいと言われて。


ご飯を食べた後、ベッドの上に横になって、ぼんやりと天井を眺める。


弘志さんが言った通りだったな。


幽霊は後ろにいる、絶対に逃げられない。


やってからその言葉の意味が分かってもダメだよ。


もっと詳しく説明してくれていたら……。






それでも、きっと私は行っていたんだろうな。


あの時の私は、とにかく19時19分に間に合うようにとしか考えていなかったから。


他の誰かの意思で動かされているような、どうしようもない感覚。


それに逆らおうとも思えなかった。


つまり、一回目をやってしまえば、絶対に二回目をやってしまって、絶対に失敗する。


餌につられてやって来た獲物は、捕食者の餌食になる。


人の弱みにつけこんだ、甘くて危険な罠だったんだ。


後悔してももう遅い。


彩乃を助ける為だったとはいえ、一回目もやるべきじゃなかったのかな。


そんな事を考えながら、私は眠りに就いた。


もう二度と、あんな儀式に関わりませんように。


大切な物が、大した物ではありませんようにと。
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