ねがい
ここはどこだろう。
私は風邪をひいて眠っていたのに。
と、いう事は……これは夢だ。
ここ数日みたいに、夢かどうか分からないようなものじゃないからすぐ分かる。
何度か見た事のある、誰かの家の廊下。
「ここって……彩乃の家?」
階段を上がってすぐ。
一番奥の部屋が彩乃の部屋で、そこに向かって歩き始めた。
私の願い事が叶ったかどうか、気になったから。
現実では確認出来ないから、せめて夢の中だけでもと思っていたのだろう。
足早に部屋へと向かって、ドアを開けると……あの時見た場所にうずくまる、制服姿の誰かがいたのだ。
「あ、彩乃?元に戻ったの?」
またドロドロだったらどうしようと不安になったけど……。
私が尋ねると、ビクッと身体を震わせて、ゆっくりと頭を上げる。
「誰?菜々なの?」
そう言いつつもこちらを見ようとしない。
何かおかしい……。
普通なら、振り返って誰かを確認するはずなのに。
彩乃は私と顔を合わせたくないの?
それとも、振り返る事が出来ない理由があるの?
「菜々だよ……私ね、彩乃が元に戻るようにって、願い事を叶えたんだよ?」
そう言いながら、恐る恐る部屋に入った。