ねがい









ここはどこだろう。


私は風邪をひいて眠っていたのに。


と、いう事は……これは夢だ。


ここ数日みたいに、夢かどうか分からないようなものじゃないからすぐ分かる。


何度か見た事のある、誰かの家の廊下。


「ここって……彩乃の家?」


階段を上がってすぐ。


一番奥の部屋が彩乃の部屋で、そこに向かって歩き始めた。


私の願い事が叶ったかどうか、気になったから。


現実では確認出来ないから、せめて夢の中だけでもと思っていたのだろう。


足早に部屋へと向かって、ドアを開けると……あの時見た場所にうずくまる、制服姿の誰かがいたのだ。


「あ、彩乃?元に戻ったの?」


またドロドロだったらどうしようと不安になったけど……。


私が尋ねると、ビクッと身体を震わせて、ゆっくりと頭を上げる。


「誰?菜々なの?」


そう言いつつもこちらを見ようとしない。


何かおかしい……。


普通なら、振り返って誰かを確認するはずなのに。


彩乃は私と顔を合わせたくないの?


それとも、振り返る事が出来ない理由があるの?


「菜々だよ……私ね、彩乃が元に戻るようにって、願い事を叶えたんだよ?」


そう言いながら、恐る恐る部屋に入った。
< 180 / 265 >

この作品をシェア

pagetop