ねがい
その仕草は私が知っている彩乃そのもので、私が儀式をしたのは無駄じゃなかったと、やっと安心出来たよ。


「私だけじゃないんだよ。南部君も心配して来てくれたんだから」


「えっ!?どうして南部君が」


驚いたように布団で胸元を隠して、視線をフラフラと泳がせる。


「山中さん、元気みたいだね」


私の隣にいた南部君がそう声を掛けると、恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「菜々、潤だけじゃなくて俺も紹介してくれないか?」


彩乃が見えてないなら、向井さんはスルーしたかったのに、言われたら仕方がない。


「後……南部君の先輩の向井さん。色々助けてくれたんだよ」


「紹介に不満はあるけど、俺の顔を見られないとは可哀想な子猫ちゃんだ」


いつものように変な事を言いながらベッドに近付いて、彩乃の手を取る向井さん。


「助けて……って、何かあったの?」


素早く手を振り払って、私が言った言葉に興味を示す。


彩乃は覚えてないのかな。


自分の身体がドロドロに溶けて、この病院に搬送されたって事に。


「彩乃の身体が酷い事になってね、元に戻してほしいって願い事を叶えたんだ」


あの時は、それしか方法がないと思っていたから。


誰にきいても、他の答えはなかった。
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