ねがい
「忘れ物?そうか、森川は早退したんだったな。早く行ってきなさい」


職員室で先生に話して、許可を得る事が出来た。


あんな姿になった事を、先生は聞いてるんだろうな。


怒られるかと思ったけど、逆に気遣ってくれているような感じがする。


「分かりました。失礼します」


職員室から出て、携帯電話を見ると19時14分。


歩いて行っても間に合いそうだ。


夜の学校に一人でいる……。


今から帰るというわけではなく、音楽室に向かうというのは、湧く感情が違う。


不安で、心細くて……怖い。


廊下を歩き、照明のスイッチの前にやって来て、それを全部オンに切り替えてみる。


朝には蛍光灯が切れてたみたいだから、点かないかなと思ったけど……。


私の予想に反して、廊下を明るく照す光が、頭上から降り注いだのだ。


交換したのかな?


いや、そうじゃない。


何日か前から、チカチカと点滅していた箇所はそのままだ。


どういう事なのかは分からないけど、とにかく明るくて良かった。


少しだけ怖さが軽減されたと安心して、階段へと向かう。


先生には内緒だけど、外靴で校舎の中に入ったから罪悪感があるかな。


階段に差し掛かり、上り始めると、違和感に気付いた。
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