ねがい
私以外に生徒がいるとは思えない。


いたとしても、誰がいるかも分からないのに、置いて行かないでなんて言うはずがない。









「待ってよぉ!行かないでよぉ!!ずっと一緒にいてよぉ!!」










何だか……嫌な予感がする。


後ろを付いてくる幽霊とは明らかに違う空気。


足元に、凍り付くような冷気が漂っているのが分かる。


「なになに!?誰が来るの!?あれも幽霊!?」


私が尋ねても、幽霊は答えてくれなかった。


それどころか、さっきまで背後に憑いていた幽霊の吐息も足音も、全く聞こえなくなったのだ。


幽霊も逃げ出す幽霊って事なの!?


そんなの聞いてないし、どうすれば良いのよ!!


走ってはいけない。


走ってはいけない。


そう心の中で唱えながらも、早足で階段を下りる。


だけど、あの声が近付いて来て……。


私が踊り場を通り過ぎた時、その声は大きく、階段に響き渡った。












「あれぇ?どこに行ったの?一緒にいてよぉ!!」











二階からは私の姿が見えなかったのか、階段を通り過ぎて廊下を走って行く幽霊。


あれはなんだったのだろう。


戻って来ないうちにと、私は早足で階段を下りた。
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