ねがい
『でもまあ、願いを叶えたってやつも、大切な物を失ったってやつも聞いた事がないから、ただの噂だと思うけどね』


南部君も、私と同じで信じていないみたいだけど、私は知っている。


それが嘘か本当かは分からないけど、彩乃は確かに願いが叶ったと言っていた。


嘘だと言うなら、眼鏡を掛けていなかったのはどういう事だろう?


コンタクトレンズ?


いや、そんな嘘をついて彩乃に何の得があるの?


分からないな。


何にしても、私には関係がない事だ。


「ありがと、じゃあ私はもう寝るね。また明日、詳しく話を聞かせてよ」


『えっ!?あ、ああ、分かった。色々調べておくよ!おやすみ、森川さん!』


寝る前だってのに、南部君は元気だな。


それに、色々調べるって……今から何を調べるんだろう。


携帯電話を枕元に置いて、布団を鼻まで被り、私は目を閉じた。


考えるのは彩乃の事。


私が電話を切った後、音楽室の前に行った。


南部君の話だと、幽霊に話し続けて、質問をされないようにしないといけない。


彩乃はそれを知っていたんだよね?


知ってて、願いを叶えようとしたんだ。


おかしな事にならなきゃ良いんだけど……。


そう考えて、私はスーッと眠りに就いた。
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