ねがい
何だか胸が温かいというか……ほんわか顔が熱くなっているのが分かる。


そんなソワソワしてる私に気付いたのか、突然正座になって、南部君が私に近付いてくる。


えっ!な、何?


も、もしかして……私が好きだからって、何かしようって考えているわけじゃないよね!?


少し思い詰めたような表情で、ジリジリと私に迫る。


ダメだ、目が怖い!


「な、南部君?ど、どうしたの?目がマジなんだけど……」


「まだあの事を考えてるみたいだから……俺は何があっても、森川さんを行かせたりしないよ」


そう言い、私の腕を掴んで、グイッと引き寄せる。


バランスを崩して、倒れた場所は……南部君の腕の中だった。


変な体勢のまま、私は南部君に抱き締められていて、心臓がバクバク音を立てる。


何でこんな事になったの?


どうして南部君は私を抱き締めているの?


頭の中をグルグルと、色んな想いが駆け巡って。


私を行かせないと言って抱き締めた南部君は、少し強引かなと思ったけど……嬉しいかな。


南部君が好きだって分かったし、好きな人に抱き締められるなんて初めてだから。


その腕にそっと手を添えて、時を刻む時計に視線を向けた。


後19分、こうしていられると思いながら。
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