ねがい




……誰かの声が聞こえる。





夢の中で、遠くの方から聞こえる歌。


何だろうこれ。


私が好きな……でも、聞き飽きた歌だ。


しばらく唸りながら考えて、その歌の意味を理解して、私は目を覚ました。


「も、もう朝!?」


枕元にある携帯電話から流れる、アラーム代わりの着うた。


それに起こされた私は、慌てて起き上がったものの……部屋の中は真っ暗で。


眠気も相まって、何が何だか分からない。


目を擦りながら携帯電話に手を伸ばしてそれを取った所で、歌は鳴り止んだのだ。


「何よ何よ……まだ2時じゃない。着信?一体誰が……」


こんな真夜中に電話をしてくるなんて、どれだけ非常識なのよ。


少し腹を立てて、着信履歴を開いてみると。


そこにあったのは「山中彩乃」の文字。


「もう……いい加減にしてよね!話があるなら明日聞くっての!」


再び携帯電話を枕元に置き、私は布団を被って目を閉じた。


どうしてこんな時間に電話なんて掛けてきたんだろう。


本当に頭が良くなって、今まで解けなかった問題が解けるようになったとか?










どうでも良いよ。


私の眠りを妨げないで。


私は10時間寝なきゃ、日中眠くなるんだから。
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