ねがい
「だとすると、おかしくないか?元に戻してほしいと願って、元に戻るなら……失敗して失った大切な物はどうなるんだ?」


それは……彩乃が大切な物が何かは分からない。


でも、元に戻してと願ったのなら、それも元に戻るんじゃないかな?


「元に戻るってそういう事っすよね?失った物も元通りになる。違います?」


南部君も私と同意見。


相性が良いのかな?


なんて考えてしまう。


「どうかな。だとすると俺の先輩はどう見る?二回目に失敗して自殺した先輩は、間違いなく大切な物を失った。他人を殺してまで守ろうとした自分の命を。元に戻してと願うだけで、その命は返るのか?もう肉体は存在しないのに」


私と南部君の意見を、スパッと斬り捨てるような向井さんの言葉。


誰も試した事がないから、その答えは分からない。


唯一、その答えが分かるとすると……身体が溶けた彩乃。


家中に落ちていた妙な液体。


彩乃の身体の一部に間違いないあの液体は、完全には回収されなかったはず。


安定してるなんて言われたから、元に戻ったんだと思っていたけど……その姿を見たわけじゃないから。


向井さんが言うように、失った物まで元に戻るというのはおかしいんじゃないかと、私も思い始めていた。
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