青空の下月夜に舞う 2
「美咲、お前は前」
「えー」
「雅也さんとこで下ろしてやるから」
「やった!ならいいよ!響はいつ見ても男前だね~。誰かさんと違って~」
悪態を吐きながら、助手席のドアを開けて、中に体を入れた。
黒い髪がさらりと靡いて、視線が私を射抜く。
「ほら。こっちこい」
顎で“乗れ”と示す響に、相変わらず偉そうだ、とか思いつつも、体が動かない。
だって。
「……電話するって」
呟いた言葉。
それはしっかり、響の耳に届いた様子。
「しただろ」
さっきのは違うよ。そういう意味じゃない。
眉を曲げて、響を見る。
「何もしねえよ。だから来い」
「……何か野良犬扱いされてるみたいに感じる」
「気のせいだ」