俺のSPはくの一女子高校生
楓の気配の消し方は尋常じゃないほど上手い。
先生が出席をとるとき、楓が席に座っていることに気付かないほどだ。
だからクラスの人たちの楓の認識は低いため、楓に話し掛ける人はいない。
楓も同じクラスの人と話せばいいのに……。
「なぁ、楓。そろそろ、気配を消して過ごすのやめたら?」
「どうして?」
「どうしてって……」
つまらない授業が全部終わり、放課後、和菓子喫茶に楓と来たときのこと。
全体的に和風な店内には、常連客のような人がいて、それぞれカウンターやテーブルに座っている。
幾つもの窓から差し込む茜色の光が店の中に差し込み、店全体をレトロな雰囲気と落ち着いた空気を演出していた。
楓は注文した秋の和菓子セットの紅葉饅頭を食べようとした手をとめて首を傾げる。
「だってさ、やっぱりひとりは寂しんじゃねえかなって」
「別に寂しくないよ。お昼ご飯は朔と一緒に食べれるから。……もしかして、朔は友達と一緒に食べたいの?」
「いや、そういうわけじゃねえけどさ」