すでに恋は始まっていた
ガラガラ…


私は樹君の教室へ入った。


「失礼しまーす」


急な登場にまず声をあげたのは先生。


「夢咲さん⁉︎それと潮崎君も…」


クラスのみんなも騒ぎ出す。


《なんで潮崎が日菜華さんといるんだよ》


《いつ知り合ったんだ?》


樹君の遅刻を回避することにしか頭が回らなかった私の計算ミス。


(みんなが混乱すること忘れてた…)


「先生、私が樹君を引き止めていたんです。授業遅刻にはしないでもらえませんか?」


《樹君って…名前呼びかよ!》


《2人ともどういう関係なの?》


(やば!余計に騒ぎ始めちゃったよ!)


私の気持ちとは反対の方向に状況が進んでいく。


「わ、わかりました。潮崎君、早く席に着きなさい」


《夢咲さんのお気に入りなのかしら…》


(ちょっと違います)


「それじゃあ、いっ…潮崎君、またね」


私は樹君に手を振って自分の教室へ走った。

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