すでに恋は始まっていた
「もうさ、その人諦めたら?今更どんな人なのかもわからないし…」


《私だったら絶対次の恋に乗り換えるのにな〜》


「うっ…そうだけど…」


泉の言葉はもっとも。


昔だったら、昔の顔でさえあまり覚えてないのに今の顔がわかるわけがない。


このままじゃ、私は一生顔も姿もわからない人を追いかけ続けることになる。


「日菜はさ、カーネーション君を一途に思い続けてる自分が好きなだけなんじゃないの?」


「え?」


泉の言葉が少し引っかかった。


(カーネーション君に恋してる私が好き…か…。それって、相手が誰でも良かったってことになるんだよね?)


はっきり違うって言いたい。


だけどその言葉が出てこない。


だって顔も名前もわからない人を一途に好きなんてありえる?


そう考えると自信がなくなってきた。

< 275 / 363 >

この作品をシェア

pagetop