すでに恋は始まっていた
疾斗が走り去って、やっと泉が私に気づいた。


「泉〜。助けてくれればよかったのに〜」


「ごめんごめん。お父さんにあいつのこと調べてもらおうと思ってメールしてた!」


そう言って手を顔の前で合わせ、ごめんなさいのポーズをして見せた。


(お父さんって理事長だよね。っていうか、娘とはいえど、生徒の秘密バラしてもいいのかな?)


私が考えていると、泉まで何かしかめっ面をし始めた。


《別にバッチ付けてない限りバレないし…お父さんはいいやつって言ってたから関わってもいいかな〜なんて…日菜に言うべき?》


1人で頭をかかえて悩みだしてしまった。


だけどそんなの丸聞こえ。


「ごめん、泉。全部聞こえてる」


(私には隠し事できないって言ってるのに…)

< 28 / 363 >

この作品をシェア

pagetop