すでに恋は始まっていた
「ねぇ樹君?ちょっと暑くない?アイス買ってくるよ!」


「日菜、今何月だと思ってるの?」


冷静な樹君を見ると、私の作戦はばれているのかもしれない。


(…そうだよね。11月に熱い奴なんていないか)


「あ!私、ちょっとトイレに行ってきてもいい?」


「じゃあ、すぐそこにあるから5分で帰ってこれるね。行ってらっしゃい」


「うん!」


(やった!これで逃げられる!)


私がスキップまじりにトイレへ向かおうとすると、樹君が後ろから声をかけてきた。


「もし日菜が5分以内に帰ってこなかったら、何かあったと考えて疾斗さん達に連絡して探してもらうからね!」


(え…)


その言葉で足が止まった。


樹君の方を振り返って苦笑いをする。


樹君の顔は笑っているけど…目が笑っていない。


「う、うん。すぐ帰ってくるね」


私はもう1度振り返ってトボトボと歩き出した。

< 300 / 363 >

この作品をシェア

pagetop