すでに恋は始まっていた
私は疾斗の友達に断りを入れると、ニコッと微笑んでいきなり走り出した。


私、男子の平均記録よりも走るの早いんだけど…それについてこられた疾斗はさすがレトワール1位だなって思う。


どこにしようか迷ったけど、あまり人が通らない2階へ続く階段裏に連れてきた。


「なんだ?日菜?」


私が急に手を引いて走り出し、ここまで連れてきたもんだから何が起こったのかわかっていない。


少しだけ、私の足の速さに驚いているようにも見える。


(全然わかってないな、こいつ。それとも私が女子に睨まれてるのわかってやってるの?)


「あのさ、すれ違うたびに声かけてくるのやめてくれない?」


「…だって友達だろ?」


この間私が認めちゃったから、それを言われるときつい。


(それはそうだけど…)


「と…友達でも普通あんなに話しかけないよ!」


「…じゃあ彼女になってくれるか?」


「やだ。絶対やだ」


これだけは即答。


何があっても疾斗を好きになることは絶対にない。

< 31 / 363 >

この作品をシェア

pagetop