すでに恋は始まっていた
「頑固だなぁ〜」


「第一、私には好きな人が……なんでもない!」


思わずカーネーション君のことを言ってしまいそうになった。


(こんなやつに何言ってんの!私!)


怒っていたはずなのに、好きな人のことを話しそうになって失敗したせいで顔が赤くなる。


「え…」


疾斗顔から一気に笑顔が消えた。


そして私が向いている方向から冷たい風が吹く。


(また風?それも今回はなんだか…冷たい…)


「なんで…風が…」


《まずい!》


たったその一言だけど…聞こえた。


今だけ…疾斗の本当の声が。


(なんで?)


焦った顔をした疾斗は「またね!」と言って走って行った。


いつのまにか、冷たい風が止んでいたことに気づく。


「…今のなに?」


私は驚きのあまり、しばらくその場を動けなかった…。

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