すでに恋は始まっていた
「もしかして…日菜はあの時の…」


(覚えていてくれたんだね…)


あの時の疾斗が小さい私をどう見ていたのかはわからないけど…記憶に残ってくれているだけでも充分幸せ。


「そう、私はそのキーホルダーを疾斗にあげたの」


疾斗の手にあるうさぎのキーホルダーを撫でる。


(また会えたね…)


お母さんがくれた、オーダーメイドのキーホルダー。


大好きだったキーホルダー。


大好きな人に、初めてあげたプレゼント。


「俺、ずっとこれをくれた人を探していたんだ。…俺の初恋の人だから。…日菜だったのか」


疾斗の顔は「信じられない」という表情。


だけど、その中には嬉しいっていう感情も入っているように見える。


私も嬉しいよ!って伝わるように、ニコッて笑う。

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