すでに恋は始まっていた
「日菜〜」


教室のドアの方から私を呼ぶ声が聞こえる。


「………」


(また…)


足音はだんだん大きくなっていって、私の目の前で止まった。


「おい、無視するなよ!」


「………」


「ちぇっ…しょうがねぇ。今日はレトワール1位のことは聞かねぇから無視すんなよ」


私が下を向いて返事をしないのは、レトワールのことを毎日のように聞くからだと思っているみたい。


(違う。レトワールじゃなければいいわけじゃない)


「ぅことじゃない…」


「は?なんだって?」

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