すでに恋は始まっていた
「…お前はどうしたいんだ?」


「え?」


予想外な返答に少し涙がひっこむ。


「周り気にして、友達突き放すほど周りの奴らは大事なのかよ!」


いきなりの大きな声に少しびっくり。


正直この言葉は胸に刺さった。


だけど今の私の口からは勢い任せの言葉しか出ない。


「そうよ!私にとってはその方が大事。だからもう関わらないで!」


(言ってしまった…)


本当はそんなこと思っているわけがない。


だって疾斗との時間は本当に楽しかったんだから…。


私だって、ずっと一緒にいたいって思ったんだから…。


でも…私には、平和な学校生活っていう毎日を諦められなかった。


「日菜!」


泉は1番の私の理解者。


私の気持ち、誰よりもわかってくれているはず。


だからこそ止めてくれたんだと思う…でも…。


(ごめん泉。でも、もう私…耐えられないよ…)


「……わかった」


その一言を残して疾斗は教室を出て行った。


雨が降り出した。


天気予報では1日晴れなのに、降り続ければ浸水してしまいそうなほどの大雨だ。


「日菜、謝らなくていいの?」


「知らないよ。あんなやつ…」


(私の気持ち…私は何をしたいんだろう…)

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