思いは記念日にのせて

「ワタシを騙したネ!」

 シャワーを浴びていた悠真が浴室から出てくるなりアメリーが頬を膨らませて飛びかかっていった。
 髪を拭きながらリビングに入ってきた悠真はなんのことかさっぱりわからなかったみたいできょとんとしている。
 Tシャツの文字の意味だとわかると悠真は立ったままお腹を抱えて笑い出した。

「まさか騙されるとは思ってなくて……ごめんごめん」

 アメリーが英語で抗議しているようだけど、わたしには何を言っているかさっぱりわからない。
 だけどアメリーの必死そうな感じが伝わってきてソファに座りながら笑い転げていると。

「――……ハル!」

 意味の分からない英語の最後、そう聞こえた。
 ……ハル?
 思わず反応して笑うのをやめると、悠真も一瞬で素に戻っていた。
 急に静かになったリビングの中、アメリーの肩がピッと強ばったように見える。

「oh……」

 まいったと言った感じで、うっすらと笑いを浮かべたアメリーが肩をすくめた。
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