思いは記念日にのせて
その日、悠真のお母さんが不在で悠真がご飯を作ってくれるという。
冷蔵庫の中身を適当に出してから炒飯を作ろうとしていたようだけど、人参を切る手が危なっかしくて見ていていらいらする。
「もう、わたしがやる!」
包丁を奪い取ってやると「おっ」といった顔で見られた。
まさかこれが狙いだったとか?
アメリーが手伝うと言ってエプロン姿でキッチンに入ってきたけど、こちらも悠真とどっこいどっこいの腕前ですぐに追い出してやった。
「んーおいしい。千晴料理うまいネ」
「ただの炒飯じゃない」
「これならいいツマになるよネ、悠真」
「こっちに振るな」
アメリーと向かい合わせに座っていた悠真の耳がほんのり赤い。
わたしが作っている間にビールでも飲んでいたのかな。自分ばっかり。
たまにはこうして飯を食いに来いよと言われ、わたしは柘植家を後にした。
飯を食いに来いって、作りに来いの間違いじゃなかろうか。まあ……たまにだったらいいけどね。
あれ。
そういえば、悠真の家にいる時はアンケートボックスに入っていた画像のことや重々しい気持ちがすっかり消失していて、心から笑えていた。
それはありがたいことだと素直に思えたんだ。