思いは記念日にのせて
 
 家の中まで美花さんを運んでもらったお礼にお茶を出そうとしたんだけど悠真は遠慮して帰って行った。
 美花さん美人だし、ノリノリで誘いにのると思ったのに意外。
 その美花さんはシャワーをざっと浴び、濡れた髪も乾かさないままわたしのベッドにダイブして眠ってしまっていた。

 なにかいやなことでもあったのかな。
 たまには羽目を外したい時だってあるし、たまたま今日がその日だったのかもしれない。ガス抜きになったのならいいんだけど。
 何気なく携帯を見ると、茅野くんからのメールだった。
 いつもならLINEのグループメールなのに、なんで今日は普通のメール?

  『美花大丈夫? 悪いけど頼むな。千晴』

 たった一文。
 ははあ、もしかしてもしかしなくてもこのふたりって。
 貴文さんや高部くんに知られたくない内容だからグループメールじゃなかったってことか。

 なんとなくひとりで納得してうなずきながら『了解、任せて』とだけ返信しておいた。


**


 翌日起きて即「醜態を見せた」と平謝りをする美花さんに気にしないでと言ったけどそうはいかないとランチを奢ってくれた。

 美花さんも職場で結構なストレスを抱えているみたいだけどあまり口にするほうじゃない。
 むしろわたしのほうが貴文さんのことや悠真のことを質問攻めにされた。
 貴文さんのことはともかく悠真のことに関しては答えられることも限られている。だってこっちに帰ってきてまだ半年もたたないし、そんなに接点もないから。

 とは言ってもキスだけはしている仲だったりするからなんだかやっかいだったりする。
 もちろんそんなこと言えやしないけど。
 
 美花さんは茅野くんのことはおくびにも出さなかった。
 いつか話してくれる時が来るといいな。
 
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