思いは記念日にのせて
午後になり、すぐに研修メンバーが発表されて集まる。
男女二名ずつのグループで、みんな賢そうな感じ。
いや、自分以外は賢そうに見えるものだ。ここで気後れしちゃいけない。
舐められないよう背筋をぴんと伸ばしてみたけど、緊張は少しもおさまってはくれない。
まるでお見合い風に男女二人向かい合わせに座り、指導員の社員を待つ。わたしの右隣の席の人、かなり美人だった。
栗色のボブヘアは緩くウエーブを描いていて、気の強そうな切れ長の目元はブルー系の控えめなアイシャドウ、唇は派手になりすぎないようにしているのか暖色系の口紅。
「なに?」
わたしの視線に気づいて右隣の子がこっちを見た。
「あっ、いえっ」
「なんかついてる?」
「ぜっ、ぜんぜんっ」
「ならいいんだけど、まるでスナイパー並の視線感じたから」
どっ、とその場に笑いが広がる。
緊張していたのか男性社員の方もほっとした表情を見せた。
その時、かたんと音を立てて誕生日席の椅子が引かれた。
うわ、やっぱり指導者はここに座るのか。わたしとその向かいに座っている男性社員の肩に力が入る。一番近い席だなんてついてないな。
緊張のあまりそっちに視線を送れず、軽く頭を下げた。
「はじめまして、今日から一ヶ月間君達の指導員として任命されました。霜田貴文です」
――……なぬ?
聞き覚えのある名前、そして声に思わず弾かれたように顔を上げてしまう。
「あ――」
わたしの顔を見るなり、霜田さんは目を丸くして声を失った。