思いは記念日にのせて
途中サービスエリアに寄ってご当地の焼きそばを食べたりしながら地元に着いたのは二十時を過ぎていた。
わたしはあんまりお腹は空いていなかったけど、貴文さんが同期に教えてもらったというオススメの焼肉屋に行くことに。
運転していたからか貴文さんは食欲旺盛でタン塩、カルビ、ホルモンと頼んでいく。
ただまだ運転があるのでビールは飲めなかったのがすごく残念そう。
家で飲むからいいよと言ってはくれたけど、わたしが運転免許を持っていれば代わってあげられたのに申し訳なかったな。
「わたしあんまり食べられませんよ」
心配になって自己申告したけど貴文さんは「大丈夫」と繰り返してさらに頼み始めた。
こんなに細いのにこのお肉どこに行くんだろうって思うほど。
軽めのクッパや大根サラダを食べていると、時々タレの小皿に焼いたお肉を入れられる。
気を遣って少しにしてくれているのが貴文さんの優しさなんだろうな、と多少ノロケ気分も味わってサンチュと一緒に食べた。
貴文さんはお肉を焼く係、わたしはサラダやスープを小分けする係みたいな感じになってなんとなくいい雰囲気も一緒に味わって。
「今日はいっぱい動いたからたくさん食べて元気出さないと。この後も……」
ちらっと上目遣いにこっちの様子を窺うようにしている貴文さんと視線が合った。
同じようにわたしも貴文さんを見ていたからどきっとしてしまう。
もちろんそのつもりでいました。
なんて言えるはずもなく、わずかに視線を焼肉の方に落としてから首を傾げたりなんかして小さくうなずいた。
了承と捉えてくれたのか、貴文さんがほっと吐息を漏らす。