思いは記念日にのせて
とうとうこの日が来た。
その後は胸がいっぱいであんまり食べ物が入っていってくれなかった。
ひさしぶりの貴文さんの家。
真っ暗な玄関に入った途端、いきなり後ろから抱きしめられたのには正直口から心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらいびっくりした。
「た、貴文さん」
暗い中でわたしの声が余計に震えて聞こえるのが恥ずかしい。
肩の辺りにある貴文さんの腕に手を回してぎゅっとしがみつくと、反対の手で頬を持ち上げられる。
顔だけ振り返させられるようにしてちゅっと軽いキスが落とされた。
「ごめん、俺がっつきすぎてる。焼肉食ったのに歯も磨いてないし」
「それはお互い様です」
くすっと笑いあい、いい雰囲気のまま腕を引かれてリビングへ向かうと暗い中に赤い光がひとつ灯っているのが視界に飛び込んできた。
「あれ、留守電? 最近滅多になかったのに」
確かにわたしの家の留守電も数が減った。
携帯にかければすむことだから家の電話もいらないかなって思っちゃうくらいだもん。
貴文さんが留守電の再生ボタンを押すと、ピッと高い音が鳴った。
『こちら高畠警察の――と申します。霜田貴文さんのお宅で間違いありませんよね。本日午後二十時頃、お父さんの雅英さんが運転されていました車が事故に遭いました』
「――え」
『現在高畠総合病院にて緊急手術中ですので、気づき次第こちらに来ていただきたく連絡させてもらいました』