思いは記念日にのせて
「え、おばさんは?」
「昨日から友達と旅行」
あのおばさんに友達がいたんだ。
そこ驚くところじゃないか。ふーんと流しておこう。
「アメリーは?」
「里帰りしてる」
「そうなんだ……ふぅん」
「ふたりっきりで意識しちゃう?」
「っ、そんなわけっ!」
あるはずないじゃない、という言葉が続かなかった。
ニマニマとする悠真が憎たらしくてふんっとそっぽ向いてやると高い笑い声をあげた。
「まあ飲みましょうや」
冷蔵庫からチューハイとビールの缶を持って小脇にポテトチップスやらチーズ鱈なんやらを抱えてわたしが座っているベランダ側のソファに向かってきた。
「連絡来るから」
「わかってるよ。だから飲みながら待ってればいいよ」
「寝ちゃったら困るし、そういう気分じゃない」
「起こしてやるから大丈夫だって。なんなら着替えも貸すからついでにシャワーでも浴びてリラックスしてこい」
泣いて化粧がどろどろと再び笑われる。
そうだ、あの涙は失態だった。
家で浴びてくると言っても戻ってこないつもりだろうと問いつめられ、ちゃんとここに来るからと約束した上でようやく家に帰ることができた。
今はひとりでいたくなかったから、そんなふうに言ってくれて本当はありがたかったなんて口が裂けても言わないけどね。