思いは記念日にのせて
 
 そんな時、わたしの携帯が鳴った。
 ディスプレイには『貴文さん』の表示。病院についたんだ!

「はいっ!」
『……千晴――』

 すぐに出ると、電話の向こうの貴文さんの声はひどく疲れているようだった。
 そしてその貴文さんから聞かされた真実にわたしの頭の中はしばらく真っ白になってしまっていた。

 なんて言って切ったのかすら覚えていない。

 
「どうだったんだ?」

 いつの間にかスケッチブックを置いた悠真がわたしの隣に座っていた。
 今、自分がどんな顔をしているかわからない。
 だけど悠真の方を向いて力なく笑ってみせる余裕くらいは残っていたようだ。

「嘘、だったんだって」
「――は?」
「貴文さん、ご両親と連絡ついて……ふたりは今日、近所の人に誘われて泊まりがけでハイキングに行ってたらしいの」
「……うん?」
「警察からお父さんが事故に遭ったという連絡をもらった、お母さんとも連絡が取れないって貴文さんが言ったら『山の中で圏外だった』って言われたって。お父さん、怪我もなにもしてなくて元気に電話に代わったって……」
「誰かのいたずら、ってことか?」

 わたしが深くうなずくと、悠真の眉間にくっきりとしわが寄った。
 こんなことってない。いたずらにしては悪質すぎる。
 警察のフリしてそんなデマを言うなんてひどすぎる。なんの目的があって――
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