思いは記念日にのせて

「あ」

 無意識に声が出た。
 もしかしてアンケートボックスの人が。
 そう思ったらそうとしか考えられず、全身がガタガタと震え出した。

「千晴」

 ふわりと抱き寄せられ、頬が悠真の胸に埋められる。
 暖かく包み込まれているのに、それでもわたしの身体の震えはおさまらなかった。

「怖い……怖いよ!」
「大丈夫だ、千晴」
「誰かがっ……どうしたらいいの?」

 ぎゅうっと悠真のTシャツを握りしめて訴えるけど、不思議と涙は出なかった。

 悠真はなにがあったのか心配してくれている。
 会社のことだから詳しく話すことは控えたけど、わたしと貴文さんの仲をよく思っていない人がいることだけはなんとか伝えることはできた。

 悠真が作ってくれたホットミルクがおいしくて、ようやく一心地つく。
 なんだか急に落ち着いたのと同時に眠気が訪れてきたようだった。悠真の肩にもたれて瞼を閉じるとすうっと吸い込まれるような感覚に襲われる。

「ゆ……ま」
「大丈夫だよ。僕が……を守ってあげる」

 遠いところでそう聞こえたような気がした。
 ぽんぽんと頭を撫でられ、そのリズムでわたしはいとも簡単に眠りに落ちてしまったのだった。
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