思いは記念日にのせて
第二十七話
誰がやっているかなんてわからないけど、このままにしておいていいわけがない。
エスカレートしていく嫌がらせを放置すればもっと被害が大きくなりかねないし、そうなりそうで怖かった。
だからわたしは貴文さんにすべてを話すことを決意した。
わたしが悠真と肩を組んでいる画像を見て気分を概してしまうかもしれない。
だけど根本的な解決を望むのであれば、全てを正直に話すほかない。
アンケートボックスに投入されていた画像や文章は片山課長が持っている。
それを開示してもらうために、そしてお互い冷静な気持ちで話し合えるようにと片山課長も同席することになった。
もちろんそれによる弊害もある。
恋人の日に撮影された貴文さんと西園寺さんの隠し撮り画像を見せることができない。これはわたしが勝手な自己判断で隠蔽してしまったから。
「こんなことが……」
わたしの隣に座っている片山課長が神妙な顔つきで貴文さんを見つめている。
貴文さんはわずかに震えているようにも見えた。
「この一通だけは手書きじゃない。あとはすべて同じ人間の書いた文字だろう。微妙に癖のある文字だ。跳ねと払いがほら」
開封した日付ごとにまとめてあった文章を並べてみると貴文さんの言う通りで『別れろ』という文字は確実に同じ筆跡に見える。
一枚だけプリントアウトされた『浮気者』の紙にはわたしと悠真の画像、そして貴文さんの家に一緒に入っていくわたしの画像が挟まっていたんだ。これは忘れられない。
その画像を手にした貴文さんの顔色が蒼白と言っても過言でないレベルで変化してゆく。
確かにこの画像を手にした時わたしも恐怖を感じたけど、こんなにも青ざめていたのだろうか。自分ではわからなかったけど……。